スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

シノビリカ

ひとまず、タイトルの意味はあとにおくとして、
今回は新選組のお話です。
私たちが持つ新選組のイメージを形作ったのは、
何人かの先人の史実としての歴史研究と、
作品としての歴史小説の力だと思います。

史実としての文書としては、
とくに杉村義衛翁の浪士文久報国記事や新選組顛末記は、
絶対に外せないところ。
なにせ、ご本人が語ることなのですから。
そう、杉村というのは新選組二番隊組長、
永倉新八、その人なのですから。
永倉が亡くなったのはなんと、大正四年。
明治をすら生きながらえて、亡くなるその日まで、
新選組の再評価のために残した功績は大きいのです。

とはいうものの、永倉さんが残した口伝は、
ご自分がかなり美化されておられるようで、
他の文書と整合性がない部分もあるのですが、
それは愛嬌というものではないでしょうか。
(また、官軍の追求がまだ残っていたために、
他の者の遺族への迷惑を避けるため、
自分が関わらないことも自分のこととして語ったという見方もあります。)

一方、創作としての新選組作品は、
いまの世の中には綺羅星のごとく存在しますが、
必ず触れるであろう作品はだいたい決まっています。
一つは、子母澤寛の新選組始末記。
これはまだ、好青年「沖田さん」に遊んでもらった子どもが、
老境ではあるものの存命中で、想い出を語れる頃だからこその作品。
さまざまな幕臣の生き残りなどからの直接、
間接の聞き書きを元にして、
新選組に集ったものの想いをまとめた大作になっています。

ただし、公正な史実として考えるには、
子母澤寛氏の立場は、どうしても新選組に優しいのです。
それは、ご自身の祖父が、
幕軍として上野の山で戦った彰義隊の一員であることと、
無関係ではありません。
(十番隊の原田佐之助も参加していたのはご存知ですよね。)
まず、どうしても語りたい想いのほうが先にある、
ということがいえるように思えるのです。

そして、もう一冊。
新選組の小説といったら決して外せないもの。
それは鬼の副長、土方歳三のイメージを決定づけた、
司馬遼太郎の「燃えよ剣」です。

司馬遼太郎という名前はペンネームで、
中国の歴史家、司馬遷に「遼(はるか)」に及ばないという、
謙遜でつけたとされていますが、
なかなかどうして、かなりしたたかなお方。
もしかしたら、そんな謙遜は微塵もなかったかもしれません。
というのも、司馬遼太郎こそが反骨精神の持ち主。
歴史上の人物に姿を借りて、
ご自分の想いを表現する手腕に長けていたといえます。
だいたい、 自分の好きな人しか書かないんだから、司馬さんは(笑)。

司馬遼太郎の真骨頂は、小説に創作を織り交ぜるのがうまかったこと。
彼の文体の特色として、
ストーリーのなかに急に蘊蓄が混ざってきたりするのですが、
事実と創作を組み合わせることで、
さもあらんということを思いこませるのです。

小説「燃えよ剣」は、史実ではありません。
土方歳三の三多摩時代のライバルとのエピソードなどは、
完全な創作です。
そもそも、ライバルは架空の人物なのですから。
でも、完全な虚構かといえば、それも違う気がします。
キッチリと周囲を事実でかためることで、
土方という男だったら、きっとこう動くはずということを、
誰もが納得する形にしたのが、司馬遼太郎の技量なのです。

土方歳三が「史実」として、
俳句を詠んだことは知られていますが、
燃えよ剣のなかにも、
土方と俳句のエピソードが多々織り込まれています。
そのなかでもヒロインとの別れを象徴する話のおりに、
印象的な一句が詠まれています。

「シノビリカ
 いづこで見ても
 蝦夷の月」

かつて、栗塚旭主演のテレビドラマ「燃えよ剣」では、
「シノビリカ」がサブタイトルにもなっていますから、
覚えておられる方も多いと思いますが、
シノビリカは函館に転戦した土方が、現地で覚えたアイヌ語で、
「ひどく佳い」という意味であると説明されています。
ところが、土方歳三が遺した豊玉俳句集のなかには、
この句はどこにも書かれていないのです。
そこに司馬遼太郎の「作家」としての思惑と、凄さがみえます。

事実が史実として残るということこそが、
正しいとか正しくないという以前に、
私たちが見ているものは、
その時点での誰かの想いを土台にしているのです。
それは、当時は不遇に扱われていた新選組への想いでもありますし、
ここから明日を作る、私たちへのメッセージでもあるのです。
スポンサーサイト

テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

MAYA

  • Author:MAYA
  • 年齢・性別不詳
    生息地・東京空ノ下
    山羊座O型
    左利き

    skill:
    作文・おえかき
    ・料理

    love:
    南青山
    中川勝彦
    ペントハウスの夏
    ユキンコアキラ
    チキンライス
    崎陽軒のシウマイ
    秋山奈々
    声優
    Sauternes

    dislike:
    B型異性の一部
    かまどうま
    自動改札
    ツナ缶
    マヨネーズ
    シャンパーニュに苺
    鰻重に奈良漬


    元々はリアル環境に諸事情をかかえていたときに気分転換で匿名ではじめた個人的な日記ブログでした。MAYAというのは中学以来の一部でのニックネームですから、おわかりの人にはすでに誰だかわかっていたはず。もう、実名にしてもよくなったのだけれど、ネットでの交流がはじまっていた方もおり、複雑怪奇なことになりそうだったのでこのブログDARK HEAVENでのハンドルはMAYAで通すことにしました。プロフィールにあるようなよくわからないシュミの性別不詳、年齢不詳の「キャラ」として楽しんでもらえれば幸いです。時々、性別や年齢がわかる発言をしているのは愛嬌ということで。リンクやトラックバックはご自由にどうぞ。拍手は泣いて喜びます。こんなのでよければ仲良くしてね。
最近の記事
カテゴリー
FC2カウンター
FC2ブログランキング
FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。